【書評】敗者のゲーム
今回ご紹介する本は「インデックス投資をしている人なら知らない人はいない」と言われるほどの名著です。
原題は「Winning the Loser’s Game」なので「敗者のゲームに勝つ」みたいな訳になるのですが、短いネガティブワードの方が心理的に人の注目を集めるものなので、訳す人も「中々考えてるな」と思いましたw
インデックス投資の優位性を分かりやすく説明しています。
この書籍の中では、テニスを例にした「プロのゲームとアマチュアのゲームの違い」を説明しています。
- どちらも同じ道具、服装、ルールであるにも関わらず、2つのゲームは異質
- プロは素晴らしいプレーで得点を勝ち取る
- アマチュアは自らのミスで得点を失う(=相手のミスで得点を得る)
つまり、アマチュアはミスをしないプレーをすれば失点が少なくなり、負けなくなる。
これは投資の世界でも当てはまります。
富松は長期的にお金を儲けるために(後々お金に困ることのないように)投資をしています。
なので、投資金額の規模は小さいながらも市場に参加する必要があります。
そのため「富松個人の能力では数多のプロには勝てない」という前提を常に忘れずに、長く(退場することなく)市場に居座り続け、市場が生み出す利益を1秒でも長く享受し続ける必要があるのです。
富松を含む多くの個人投資家でプロといえる人はほとんど存在しないと思います。(つまり、前述のテニスの例でいうと多くの人はアマチュアに属すると思います。)
アマチュアに属する投資家がミス(失点)をしないことで長期的に勝利を収めるには・・・
というところが本書の導入になっており、本書で論じられる内容は多くの個人投資家にとっての一つの正解を提示しているように感じられます。
以下に目次の内容を記載します。
第1部 資産運用でまず押さえるべきこと
第1章 運用は「敗者のゲーム」になった
第2章 運用機関の本当の役割
第3章 それでも市場に勝ちたいなら
第4章 「ミスター・マーケット」と「ミスター・バリュー」
第5章 インデックス・ファンドは、投資のドリーム・チーム
第6章 運用につきまとう矛盾
第2部 運用を少し理論的に見てみよう
第7章 「時間」が教える投資の魅力
第8章 収益率の特徴と中身
第9章 リスクが収益を生み出す
第10章 効率的ポートフォリオとは
第11章 なぜ運用基本方針が必要か
第12章 運用基本方針策定のポイント
第13章 運用成果測定の狙いは何か
第14章 市場予測の難しさ
第3部 個人投資家への助言
第15章 個人投資家にとっての課題
第16章 投資信託、どう選ぶ
第17章 手数料は高い!
第18章 生涯を通じた投資プランを立てよう
第19章 2008年の大暴落
第20章 401(k)投資家へのアドバイス
第21章 人生の終盤で成功するために
第22章 資産家のためのアドバイス
終 章 敗者のゲームに勝つために
やはり、インデックス投資の有効性を語る上で、「時間」、「手数料」、「市場予測」あたりは避けられないトピックスですよね☆
本書でもしっかり押さえられています。
投資家としての成功とその先・・・
インデックス投資の優位性を語る書籍はいくつもありますが、本書は投資家として成功した後の考え方に関しても言及されていて、中々珍しいなという印象と、大きな納得感の両方を抱かせる内容がありました。
- 老後の資金にゆとりのある人は余裕資金の有効な使い方を考える責任がある。
- 使い方の目標は3つある。(1.自分の生活資金の確保。2.愛する者への遺産。3.社会へのお返し)
- 富は良くも悪くも力を持つ。(子供達に残す遺産がかえって子供達の価値観を歪め、自身で富を築く喜びを奪う可能性もある。)
富松にとってはもう少し先の話になりそうですが、あらかじめ考えておくべき重要な事項ですね。
仮に大きな資産を築くことができ、その資産を使って何か社会に役立つことができたのであれば、大邸宅や高級車を手に入れるよりも大きな幸せが得られそうな気がしますね☆(もちろん老後の生活資金は差し引いた後ですけどw)
まとめ
インデックス投資の有効性に関しては多くの名著でも同じような事が語られますが、本書は「インデックス投資は勝者のゲーム」と同様、これからインデックス投資を始めてみようと考えている方にとって「分かりやすい部類に属する」書籍で、おススメです。
世の中で販売されている多くのアクティブ運用(各社独自の投資信託等)は長期で運用する場合、低コストのパッシブ運用(インデックス投資)には勝てないというデータが既にあります。
何に投資するかは個人の自由ですが、多くの個人投資家がプロでは無いことと、物事にはトレンドがあることを考えると、やはり個人投資家が安定的に利益を得るためにはインデックス投資をコアに据えた投資が(パフォーマンス的にも心理的にも)良いという事を改めて考えさせられました。
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