日本のハイパーインフレと対策(前編)

2021年3月9日

よく、テレビ番組なんかで「国の借金は年々増え続けており、国民1人あたり983万円の借金」等と、いかにも国民の借金的は表現の放送が散見されますが、これは明らかに間違った表現です。

国(政府)は歳出を賄うために国債(借金)を発行しますが、国債の主たる買い手は民間の銀行です。

民間の銀行が国債の買い受けを行う際の資金は「みんなが銀行に預けているお金(預金)」になるので、正確には国民は債務者ではなく、債権者になります。

つまり、国民が国(政府)に対してお金を貸してあげていることになります。

国が借金を返済する方法の1つとして増税があり、回り回って結局は国民がババを引くという構図はあるものの、(公共の電波を使って放送するのであれば)表現は適切に行ってほしいものです。

さて、今回は膨れ上がる日本政府の借金から見る、ハイパーインフレの可能性に関して書いてみようと思います。

そもそも日本(政府)の借金はどれくらいあるの?

財務省のホームページで「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」を見てみると、令和2年12月時点で約1,200兆円くらい借金があることが分かります。

巨額すぎて逆に良く分からない金額ですねw

富松
富松

以下は「世界の政府債務残高対GDPのランキング(2019年時点)」になります。

GDP(国内総生産)とは簡単に言うと「その国の稼ぐ力」を意味するので、稼ぐ力に対してどれぐらいの債務を背負っているか?というランキングになります。(比率が高いほどヤバい)

順位政府債務残高対GDP(%)
1日本237.96
2ベネズエラ232.79
3スーダン201.58
4エリトリア189.35
5ギリシャ180.92
13アメリカ108.68
先進国中ぶっちぎり1位の日本(褒められたものではないw)

ちなみに現時点では日本の債務状況は更に悪化して

対GDP比で250%ぐらいになっているよ。

富松
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もはや額がデカすぎて、「予算の無駄を無くして歳出を削りましょう」程度では解消は不可能なので毎年加速度的に膨らみ続ける債務額を震えながら見るしかないのでしょうか。

日本でハイパーインフレが発生する?!

さて、そんな日本で「ハイパーインフレの可能性」がチラホラ囁かれ始めています。

ハイパーインフレとは、急激に物価が跳ね上がってしまう現象です。

正確には急激に通貨価値が暴落する現象です。

富松
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有名なのだとドイツ・マルクやジンバブエ・ドル等の通貨ですかね。

生活必需品の値段が毎日上がり続けてしまい、外(国外)から見ているとギャグみたいな状況になるのですが、その国で生活する国民からすると地獄の世界が広がることになります。

パン1個が100万円という世界をイメージしてみましょうw

富松
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よく「日本はデフレなんだからハイパーインフレなんて発生するわけない」という話をされる方がいますが、そもそも通常の「デフレ⇔インフレ」と「ハイパーインフレ」は発生のメカニズムが別物です。

通常の「デフレ⇔インフレ」は通貨と商品(またはサービス)の需給バランスの変動によって発生するのに対し、ハイパーインフレはその国の中央銀行(日本だと日銀)の信用が失墜することで発生します。

なので、「デフレだった国が突然ハイパーインフレになる」という事象は普通に起こり得るのです。

とはいえ、過去にハイパーインフレに陥ったドイツやジンバブエと、日本とでは置かれている状況が全然別なので「同じようなハイパーインフレになる」かどうかまでは分かりません。

富松
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なんで日本がハイパーインフレになるのか?

まず、日本がハイパーインフレになる理由の前に中央銀行(日本だと日銀ね)の存在理由を簡単に説明します。

中央銀行という組織はその国の通貨を無から生み出す力(通貨発行権)を有した特殊な組織であり、政府から完全に独立した組織です。

日銀を見ていると、そうは思えない人が多いと思うけど、(本当は)独立してないといけないのです。

富松
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日本では元々(明治15年の日銀発足までは)、日本政府が通貨を発行してました。

当時、政府が西南戦争の戦費調達を目的に通貨を刷りまくって悪性インフレを引き起こしてしまい、通貨価値の安定を図るために日銀発足に至ったというのが、日銀誕生のあらすじになります。

一般的に、政府が自身の歳出を賄う手段「A:国民から税金をとってまかなう」が本筋としてあり、それでも足りない場合は「B:国債を発行してまかなう」という手段が取れます。

しかし、政府自身が通貨発行権を持ってしまっていると、「Aを選択して(増税して)国民から叩かれたくないし、Bで借金を作るより、足らない分のお金を作ってしまおう!!(通貨発行権の行使)」という安直な選択をしがちになります。

しかし、(理論的に)通貨を発行し続けると当然、通貨価値は暴落してしまいます。

これだとマズいよねってことで、政府とは完全に独立した組織として中央銀行が存在し、「好き勝手に通貨を発行するのを抑止し、通貨価値を管理する」という役割を担っているのです。

まさに中央銀行とは「通貨の番人」なのです。

富松
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中央銀行というのは金利を変更したり、通貨を増やしたりすることで、通貨の需給バランスをコントロールできます。

その結果、その国の経済成長を促したり、物価を安定させることができるのです。

通貨価値を管理することで、国を守っていると言っても過言ではないのです。

富松
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さて、そんな(各国の)中央銀行が「常識としてやっちゃダメ」としていることがあります。

それは「財政ファイナンス」という行為です。

財政ファイナンスとは国(政府)が発行する国債を中央銀行が買い受けることで、「政府の財政赤字を中央銀行が補填する」という行為です。

簡単に言うと「政府が欲しい分だけ、中央銀行がお金を刷ってあげてる」ような行為です。

富松
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「財政ファイナンスを実行した国でハイパーインフレにならなかった国は過去に1つもない」という歴史的事実が存在するため、各国の中央銀行は財政ファイナンスを常識として行わないのです。

(そもそも財政ファイナンスをやっちゃったら中央銀行の存在意義がないですからねw)

財政ファイナンスは、日本でも「財政法第5条」で禁止されている行為です。

あれ?何か変ですよね?

日銀は「異次元の金融緩和」の旗の元で国債を買いまくってませんでしたっけ?

それって財政ファイナンスじゃないんですかね?

日銀の言い分を以下の図にしてみましたww

日銀の言い分「日銀が直接国債を買っているわけではなく、(証券会社や銀行という)市場を通じて買っているので財政ファイナンスではありません。セーフです!!」

いや。アウトだろw

富松
富松

しかし、「借金が年々加速度的に膨らむ国」の発行する「金利がほぼゼロの国債」なんてはっきり言ってゴミなのでこのゲームがいつまでも続くとは考えにくいです。

中央銀行は通貨発行権を持っているので無限に通貨が発行できます。

そんな組織が、(政府が欲しい分だけ)無限に通貨を発行し政府の赤字を補填し続けることで、財政破綻を永遠に先送りし続けることができるのならこんなに楽な事はないですよねw

そんな錬金術が有効なら、消費税率を上げる必要なんてないし、そもそも国民から税金を取る必要もないですからねw

富松
富松

日銀が(実質的に)財政ファイナンスを行う以上、日本(政府)の財政破綻は起きないと思いますが、ハイパーインフレ発生の材料は着実に積み上がることになると思います。

現在の日本(政府)の借金は1,200兆円で、日本の一般家庭の金融資産総額が大体1,700兆円くらいなので、今、国民の資産を強制的に没収すればリセット(返済)できますが、日本はこれでも民主主義の国なのでそんなことはしないでしょう。(借金が1,700兆円を超えた時が何かの引き金にならない事を願います。)

となると、(消去法で)最終的にはハイパーインフレ発生のシナリオは避けられないと思っています。問題は「いつ、どの程度の規模のものが発生するのか?」ですが、これはまったく分かりませんw

富松
富松

ハイパーインフレの効果

前述で「ハイパーインフレは通貨価値が急激に暴落する」と説明しましたが、ハイパーインフレには、もう一つの側面があります。

それは「借金が(ほぼ)チャラになる」ということです。

例えば富松君が1,000万円の借金を抱えている状態で、ハイパーインフレになるとします。

パン1個が100万円とか、1ドルのレートも数十万円になるような状況では、円の価値はもはや紙くず同然なので、現物資産や外貨等の少量の売却で多額の日本円調達が可能になります。(この例だと、配当金10ドルくらいを円転させれば1,000万円なんて余裕で調達できますからね。)

大量の借金を抱えた日本がハイパーインフレになったら、むしろ政府は喜ぶと思います。

冒頭でお話した「国は債務者であり、国民は債権者」を思い出してください。

ハイパーインフレになるということは、国民や銀行、保険会社、証券会社、年金(GPIF)の保有する現金や国債も無価値になるため、政府の借金が(実質的に)チャラになるのです。

ハイパーインフレが起こって笑うのは国(政府)、結局泣くのは国民なのです。

国民の資産を強制的に没収するよりは恨みを買わない「借金帳消し」の手段ではあるw

富松
富松

日本でハイパーインフレが発生するような事態になった場合、日銀は一旦解散となってNeo日銀が爆誕すると考えています。(事実上の倒産です。)

一応、法律は日銀が解散してしまう事態も想定して作られているみたいですね。

日本銀行が解散した場合において、その残余財産の額が払込資本金額を超えるときは、その超える部分の額に相当する残余財産は、国庫に帰属する。

日本銀行法第60条第2項より

先人のほうが先を見通しているという悲しさww

富松
富松

仮に日本でハイパーインフレになった場合、過去に他国で発生したような極端なものにはならない気もしますが、少なくとも「道路交通法を守れない人が運転する車」は遅かれ早かれ交通事故を起こすものなので、日本(政府)が問題を先送りし続けた影響というのはどこかで必ず発生すると思ってます。

長くなってきましたので一端ここで区切ろうと思います。

後編ではハイパーインフレに対する対策も書いてみようと思います。

富松
富松

雑記

Posted by tomimatsu