【今更だけど】金融庁の「年金2000万円足らないよレポート」を読んでみた

2019年10月21日

先月、金融庁は問題のレポートの撤回(「今後、議題にはしません」と決定)をしました。

ただ、HP上での公開は引き続き行うとのことで、これを機にちゃんと読んでみようと思います。

レポートの正式タイトルは

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

ですw

まず目次をチェックしてみる

さすが「頭のいい人」が書いただけあって目次を見ただけで何が言いたいかわかります☆

1.現状整理(高齢社会を取り巻く環境変化)
 (1)人口動態等
   ア.長寿化
   イ.単身世帯等の増加
   ウ.認知症の人の増加
 (2)収入・支出の状況
   ア.平均的収入・支出
   イ.就労状況
   ウ.退職金給付の状況
 (3)金融資産の保有状況
 (4)金融環境に対する意識
2.基本的な視点及び考え方
 (1)長寿化に伴い、資産寿命を延ばすことが必要
 (2)ライフスタイル等の多様化により個々人のニーズは様々
 (3)公的年金の受給に加えた生活水準を上げるための行動
 (4)認知・判断能力の低下は誰にでも起こりうる
3.考えられる対応
 (1)個々人にとっての資産の形成・管理での心構え
 (2)金融サービスのあり方
 (3)環境整備
   ア.資産形成・資産承継制度の充実
   イ.金融リテラシーの向上
   ウ.アドバイザーの充実
   エ.高齢顧客保護のあり方
おわりに
【付属文書1】高齢社会における資産の形成・管理での心構え
【付属文書2】高齢社会における金融サービスのあり方

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 より抜粋

この内容を見たらわかると思いますが「老後2000万円が足らなくなる」という話は割と枝葉の部分の話であって、「重要なのはそこじゃない」ことが分かるはずです。

プラカードを持って行進してた人達はこのレポートを本当に読んでるのかな?と思いますw

退職金を運用することのリスク

本レポート内でサラっと触れられていましたが、これまで資産運用を行ってきていない人が、ある日、「退職金」という多額の現金を手にすることで、(金融リテラシーが低いままで)いきなり資産運用の世界に飛び込む事に警鐘を鳴らしています。

レポートでは「運用方針や資産運用にあたって必要な金融に関する知識を、事前にある程度は身につけてから臨むことが望ましい」と論じています。

こういった話を聞くと「やっぱり資産運用(投資)はリスクがあって怖いからやめよう」と考える人が多く、いつまで経っても投資が根付かないのが日本人の悪いところです。

この状況が起因してからか、以下に「まぁそうでしょうなw」と思う記述もありました。

なお、米国では75歳以上の高齢世帯の金融資産はここ20年ほどで3倍ほどに伸びている一方、わが国の同年代の高齢世帯の金融資産はほぼ横ばいで推移しており、対照的な動きとなっている。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 より抜粋

「投資」という行為が「資産形成の手段」として浸透しているアメリカと、「ギャンブル」として捉えている日本の歴然たる差が浮き彫りになっているわけです。

現在、日本の投資環境は整備されてきているため、アメリカをはじめとする世界の国々にある優良企業に低コストで分散投資できるようになってきています。(別に日本企業だけに投資しなければいけないというルールはありません。)

老後に対する不安の1位は「お金」

20代から50代の将来に対する不安の1位は「お金」だそうです。(ちなみに60代、70代1位は「健康」)

わかります。バブル崩壊から30年経つのにずっと不景気だし、インフレで物価は上がるけど増税の影響で可処分所得が中々上がってこないですからね。

資産寿命を延ばすために必要なことを尋ねた調査によれば、「現役で働く期間を延ばす」、「生活費の節約」を挙げる回答が多いが、このほかに約3割の者は「若いうちから少しずつ資産形成に取り組む」を挙げている。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 より抜粋

おぉ!!!約3割にまともな人がいる!!!!

「日本の未来もまだまだ捨てたもんじゃないな」と思いながら読み進めると

他方、別の調査では「老後に向け準備したい(した)公的年金以外の資産」として「証券投資(株式や債券、投資信託など)」を挙げた者は2割以下に留まり、実際に投資を行っている者の割合はこれよりもさらに低い水準とな っていることが予想され、意識と行動に乖離があることが窺える。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 より抜粋

結局やってないんか~い!!w

このあと、その原因に関して記述されていますが、富松とは考えがちょっと違う感じがしました。

投資による資産形成の必要性を感じつつも、投資を行わない理由として上位を占めているのが、「まとまった資金がない」、「投資に関する知識がない」、「どのように有価証券を購入したらよいのかわからない」という回答であり、顧客側の問題に加え、金融機関側が顧客のニーズや悩みに寄り添いきれていない状況が窺える。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 より抜粋

【原因1:まとまった資金がない】

→ 貯めるしかない。(でも今は100円から投資できる時代なのでまとまった資金である必要はあまりない)

【原因2:投資に関する知識がない】

→ 勉強するしかないw(日本人は勤勉な民族じゃなかったのかw)

良書を数冊読めばだんだんわかってきますよ

【原因3:どのように有価証券を購入したらよいのかわからない 】

ネットで検索すれば山ほど出てくるけどw

アリババの創業者であるジャック・マーの「貧乏マインド」の話が思い起こされますw

貧乏マインドの人に尽くすほど最悪なことはない。

何かを無料でプレゼントしたら「これは罠だ」と非難する。

「少額投資で大丈夫」というと「じゃあ儲からないじゃん」と文句を言う。

「多額の投資が必要」というと、「そんな金ない」と文句たらたら。

「新しいことに挑戦しよう」と誘うと、「経験がないから無理!」と諦める。

「伝統的なビジネスだよ」というと、「じゃあ成功しないね!」と却下される。

「新しいビジネスモデル」というと、「ああ、MLMか」と決めつける。

「店を経営してみたら?」というと、「自由がなくなる!」と主張。

「起業してみたら?」というと、「プロじゃないから無理」と受け入れない。

貧乏マインドの人たちの共通点とは、グーグル検索が大好きで、似たような貧乏マインドの友人の話ばっかり聞いて慰めあってる。

口先だけは大学教授なみ。

でも行動は、盲人以下。

彼らにこう聞いてみて。

「じゃあ、あなたは何ができるの?」

何も答えられないから。

私の結論は、言い訳を熱弁してる暇があったら、もっと素早く行動に移せば良い。

いつも考えてばかりいるよりも、何か実際にやってみたらどうか。

貧乏マインドの人は、ある共通点により人生失敗します。

ずっと待ってるだけで、自ら何も行動しないからです。

(補足ですが、"MLM"はマルチレベルマーケティングのことで「ネズミ講」や「マルチ商法」 みたいなものです。)

金融庁のレポートの記述では「顧客側の問題に加え、金融機関側が顧客のニーズや悩みに寄り添いきれていない状況が窺える。」とありますが、 顧客側の問題にテコ入れすれば、金融機関側の問題も自ずと解決していくような気がしてなりません。

「若いころから少しづつ資産形成を行う必要がある」ということに気付けているのであれば、もう次にすべき行動は明白です。

「投資に必要な知識を得よう!!」(本やネットで簡単に得られます。)

誰かに与えられるのを待っている状態というのはとても危険で、それこそ銀行や証券会社から手数料の高い粗悪な金融商品を売りつけられますよ。

想像してみてください。

例えば、あなたが証券会社や銀行の窓口販売員だとして、金融商品の販売ノルマが課せられているとします。

そこへ退職金を握りしめた中高年の顧客が訪れて「資産運用をしたことがなくて、どうしたらいいか・・・。何かおススメってありますか?」と聞かれたらなんと答えますか?

売る側として販売手数料が稼げないVOO(S&P500連動 ETF)なんて絶対勧めませんよねw

当然、販売手数料の稼げる(購入時手数料がかかり、高経費率の)投資信託を勧めるはずです。(商売なんだから当然ですw)

すがるヤツからカモられる。

自分で知識を得て、自分で考え、自分で判断できなければなりません。

長期・積立・分散投資の有効性

これはもう安全に投資を続けていく上では常識的な話ですが、過去のデータも併せてちゃんと説明されています。

このあたりから専門的な話に入ってきますが、これから投資をはじめようとしている人は頑張って読んでみて欲しいです。

過去記事でも書きましたが、長期、積立、分散(+再投資)が生み出すものは大きいです。

長期・分散・再投資の見本の人もいます☆

なんか読み進めているとまるで「国民に対して書いているレポート」って感じがしてきます。。

お!「金融サービスのあり方」として重要な事が書かれていますね。

顧客本位の業務運営の徹底

・ 顧客の状況からみて、過度にリスクの高い商品の販売を行わない等、顧客にとってふさわしいサービスを提供すること

・ 手数料の明確化

・ リスクやリターン等を顧客が自ら判断できるようにするための分かりやすい情報提供等

サービスに見合う適切な対価の説明と請求(サービスの持続可能性や 顧客の利用しやすさにも配慮)

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 より抜粋

日本人が「投資」から離れていった元凶にメスを入れてますね☆

こういうのを政府主導で取り締まっていくのは国民に投資を浸透させる上で重要だと思いますし、ここに切り込んでいった金融庁には拍手を送りたい(パチパチ☆)

非課税投資枠の強化を進言しているではないか!

レポート内で非課税投資枠の強化(時限撤廃)が進言されてますね。

つみたてNISA、iDeCo ともに、 利用者の声を聞きながら、制度そのものの改善にも努めていくべきである。 つみたて NISAについては、まずもって国民が長期のライフプランに沿った資産形成に安心して活用できるよう、時限を撤廃し、恒久的な措置とする ことが強く望まれる。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 より抜粋

一般NISAは? ねぇ一般NISAは?!

政府、与党は16日、期限付きで導入された少額投資非課税制度(NISA)について、恒久化を見送る方針を固めた。恒久化は金融庁や証券業界が求めていたが、現行制度は富裕層への優遇だとの指摘もあり、認めるのは難しいと判断した。

一方、廃止すれば株価に悪影響を与える恐れもあるため、制度設計を見直した上で時限措置で存続させる方法を模索する。若年層など幅広い世代に資産形成を促すために創設された長期積立枠「つみたてNISA」は期限の延長を議論する。

SankeiBizより

はぁ?!

少額投資非課税制度 → 恒久化 → 富裕層優遇?

「少額」と言いつつ、富裕層優遇とは・・

ここ笑うとこですかねw

富裕層とは金融資産1億円以上を保有する人々を指すので、年間120万円ぽっちの非課税投資枠なんて、富裕層にとってはあっても無くても変わらない(影響のない)制度です。

まぁこれは「税収が減るのが嫌なので無理やり理由をこじつけた」ってことでしょうねww

とりあえず、現時点で「数年後に制度終了すること」に頭を抱えるより、今はNISA枠をVOOやVYMで埋め尽くして資産拡大を加速させることが重要だと思います。

まとめ

このレポートは大変よくまとめられており、誰でも大まかな内容を理解することは可能と思われます。

これからも日本で生活する身として

「各個人が直面する経済的な問題は何か?」

「その経済的な問題に対する対策は何か」が提言されている内容で、是非一度読むべきだと思います。

「自分(と家族)を守るには自分でなんとかしないといけない」と強く感じたレポートでした。

願わくば、一人でも多くの人がこのレポートを読むきっかけとなりますように。

雑記

Posted by tomimatsu