脅威の高配当ETF「QYLD」は買いか?!
皆さんは「QYLD」というETFをご存知でしょうか?
年間分配金利回り10%超で、毎月分配金がもらえるという配当好きならヨダレが出そうな金融商品です。
1年くらい前にこのETFの存在を知り、保有できそうなETFかどうか値動きなんかを見てきましたので、個人的な見解を交えて「QYLD」について書いてみようと思います。
QYLDの基本情報
ETF名称:Global X Nasdaq 100 Covered Call ETF
ティッカー:QYLD
“Q"は"Nasdaq"を表していて、"YLD"は収益とか利回りとかを表す"yield"を表しています。
設定日:2013/12/12
基準価額:20ドル付近
直近分配金利回り:12.26%
分配金受領月:毎月
経費率:0.60%
運用会社:Global X Management Company
さて、「QYLD」の分配金利回りが高いことは分かりましたが、この「QYLD」というETFはどのような運用をしているのでしょうか?
公式では以下の説明があります。
ファンド概要
カバード・コール戦略で利益を生み出そうとするもので、ナスダック100指数の株式を購入し、対応する同一指数のコール・オプションを売却します。
Global X社 HPより
「カバード・コール戦略」という聞き慣れない言葉が出てきましたね。
「VYM」や「HDV」といった他の高配当ETFでは分配金の原資が「ETFを構成している銘柄からの配当金」となっているのに対し、「QYLD」の分配金の原資はこの「カバード・コール戦略」によって得た運用利益というのが大きな違いになります。
オプション取引をしている人ならご存知かもしれませんが、ちょっと「カバード・コール戦略」について説明しようと思います。
「カバード・コール戦略」とはなんぞや?
「カバード・コール戦略」とは自分の保有する原資産(株とか)を保有したままコールオプション(特定の期日に特定の価格で買う権利)を他者に売却して権利料(オプションプレミアム)を頂くことで、原資産の価格上昇が見込めない局面でも安定した収益を得る方法です。
まだ分かりにくい感じなので、例で説明します。
ある日、富松君は1000円でガンダムのプラモデルを買いました。
昨今は転売屋の存在でガンプラの価格も高騰気味です。
富松君はこう思いました。
この手元にあるガンプラは今後値上がりする可能性があるかもしれないけど、どこまで上がるかわからないなぁ・・・。
そこで富松君は「1か月後に手元のガンプラを1200円で購入できる権利」を50円で販売しました。
そこにある転売屋が現れます。
転売屋:「そのガンプラは1か月後なら1500円の値が付くと思うから、その権利を買いますよ。」
ありがとうございます!!
さて、問題はここからです。
1か月後、転売屋の読み通り、富松君のガンプラの市場価格は暴騰し、なんと1600円の値が付きました。
転売屋は権利を行使して富松君から1200円でガンプラ購入できたので購入権50円を差し引き、350円の利益を出す事に成功します。
富松君は仕入れ価格1000円のガンプラに対し、その購入権を50円で売り、更にガンプラを1200円で転売屋に売ったので利益は250円になります。
もし購入権を売らなければ富松君は600円の利益を手に入れることができたのに残念ですね。
この例でわかる通り、市場価格が大きく上昇する局面では権利料と引き換えに権利行使価格以上の値上がり益を放棄することになるのです。
では逆に1か月後、富松君の読みが当たりガンプラの市場価格が1200円までしか上がらなかった場合はどうなるのでしょう。
この場合、2パターンあります。
1つ目のパターンは転売屋が購入権を行使した場合です。
富松君は約束通り、1000円のガンプラを1200円で転売屋に売ったので、事前に売却していた購入権と併せて250円の利益を得ることができます。
購入権の50円分だけ市場価格で売却するより高い利益が得られました!!
2つ目のパターンは転売屋が購入権を行使しなかった場合です。
この場合、富松君の手元にはガンプラが残っているので、購入権の代金50円がまるまる儲かります。
自分でガンプラを市場価格で売却しても購入権の売却益と合わせて250円の利益となり、単純に市場価格で売却するより結果的に高い利益を得られましたね。
一応、富松君も転売屋も予想を大きく外し、ガンプラの価格が500円に暴落した場合も考えてみましょう。
この場合は転売屋が権利行使することはまずないので、富松君が500円の損失になりますが、事前に購入権を売却していたのでその分だけ損失額が軽減されることになります。(実質450円の損失で済む。)
つまり「カバード・コール戦略」とはまとめると以下になります。
- 市場価格が大きく騰がる局面では得られる利益が抑えられてしまう。
- 市場価格の値動きが小さい局面では権利料分の追加利益を獲得できる。
- 市場価格が値下がりする局面では権利料分、損失が軽減できる
つまり「QYLD」とは、インデックス「Nasdaq 100」に対し、上記のような「カバード・コール戦略」による運用を行うETFになるわけです。
インデックスに対しての投資ではあるものの完全にアクティブ運用のETFになります。
ちなみに「市場価格が大きく騰がる局面では得られる利益が抑えられてしまう。」という特性を証明するため、「QQQ」というインデックス「Nasdaq 100」に直接投資を行うETFと「QYLD」をバックテストでリターンの比較をしてみました。
単純にトータルリターンの高さを狙うのであれば素直に「QQQ」に投資した方が高いリターンを得られていますね。
つまり「QYLD」はとにかく高い分配金利回りが欲しい人に需要があるETFってことが分かると思います。
QYLDの運用パフォーマンスが落ちるケース
QYLDの運用は先ほど説明した「カバード・コール戦略」が軸となっているのでコールオプションの取引量が低下するような場合(誰も権利を買ってくれなくなるような場合)は当然のことながら利益を出しにくくなり、試合終了になる可能性が高いです。
QYLDの運用状況を確認しよう
続いて、「QYLD」の運用状況を確認してみようと思います。
以下は公式から出ているQYLDの財務ハイライトです。
財務ハイライトを見る限り、2020年は以下の状態の様です。
- 1口あたりの分配金は2.45ドルだった。
- 1口あたりの「投資による利益」は0.06ドルだった。
- 1口あたりの「資本の払戻し」は2.39ドルだった。
投資利益が少ない!!(全然稼げてないじゃん・・・)
え?!資本の払戻し?!
「資本の払戻し」とは投資家達が投じた資本から分配金の一部を捻出しているという解釈になるので、俗に言う「タコ足配当」というヤツですかねw
タコ足配当がマズい理由は「投資家が投じたお金が(分配金として)わざわざ税金が掛かって戻ってくる」という点です。
QYLDは「カバード・コール戦略」で稼いだお金だけが分配金の原資になっているわけではなく、投資家が投じた資本を削って足らない分配金を補填しているような運用に見受けられます・・・。
その状況を裏付けるように、QYLDのチャートでは資産がゴリゴリ削られているようにも見えます・・・。
10%オーバーの分配金利回りは超絶魅力的ですが、この状況を見るとなんだか微妙に思えてきました。
QYLDは運用上、「カバード・コール戦略」のオペレーションが発生するので、経費率は0.6%とVYMの10倍に及びます。
富松個人の見解としては、資産の払戻しが頻繁に発生しているような現状の運用成績では、この超絶高い分配金利回りが今後も維持できるとは考えにくいので本ETFへの投資は見送ろうと思いました。
やっぱり企業が稼いだお金が配当金となり、その配当金がETFの分配金原資となる仕組みの方が分かりやすくていいやww
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