BNPLがもたらす利便性と危険性
「BNPL」って何?
BNPLとは「Buy Now, Pay Later(今買って、後払い)」の略です。
最近、米AmazonでもこのBNPLという支払サービスが開始されるということで注目が集まっています。
この支払方法の大きな特徴は、「クレジットカードを持てない人でも、無金利の分割払いが選択できるようになる」ということです。
従来のクレジットカードによる分割払いを選択した場合、その金利はユーザー負担ですよね。
その金利がかからずに、しかもクレジットカードを持てない信用の低い人でも利用できてしまうなんて・・・
なんて素晴らしいサービス!って思いますよねw
今回はそんな「BNPL」に関して記載してみようと思います。
BNPLの仕組み
そもそも「なんで無金利にできるの?」という点で疑問に思う人が多いと思います。
富松も思いました。
BNPLで分割払いを選択した場合、その金利を負担するのは店舗側になります。
店舗からしたら「商品を割引して売るくらいなら、金利を負担してでも定価で買ってもらう方がマシ」という考えの元、(今のところは)この仕組みが成り立つみたいです。
さて、BNPLの仕組みですが、例えば「20万円のパソコンをBNPLで分割払い購入した」場合を例に考えてみましょう。
分割払い購入と言っても要は「借金して購入している」状態なので、この時点で20万円分の債券が発生します。
この債券の金利は店側が負担するのは前述の通りなのですが、この債券の持ち主(お金の貸し手)は誰になるのでしょうか?
実はこの債券、他のBNPLユーザーの債券とまとめて、証券化されます。
そして、この証券は機関投資家に転売されることになるのです。
つまり、債券の実質の所有者は機関投資家になるわけです。
これによって機関投資家は店舗側から支払われる金利を受け取る代わりに、債権の不払いリスクを丸々引き受ける事になります。
あれ?この話の流れってどこかで聞いた事ありますね・・・
悪夢の再来か?!
このBNPLの仕組みは、かつて「リーマンショック」の引金となった「サブプライムローン問題」と酷似しているように思われます。
米国では信用力の高い人(高給取りや公務員)はプライムローンといって低金利で住宅ローンを組むことができます。
一方、低所得者等の信用力が低い人でもサブプライムローンといわれる高金利の住宅ローンを組むことが可能です。
普通に考えると、低所得者向けの住宅ローンは破綻リスクが高いのですが、リーマンショック以前の米国は、住宅バブルで住宅価格が上昇し続けていたため、サブプライムローンも過剰に供給されてました。
住宅価格が上がり続けるなら、ローンの支払いが滞っても、住宅を売却すればおつりが返ってくるからねw
このサブプライムローンの債権は、前述のとおり、ハイリスク・ハイリターンですが、証券化され、他の高い格付けの証券(ローリスク・ローリターン)に混ぜ込んだ金融商品にすることによって、(格付けは混ぜ込み先の高いままに維持することで)ローリスク・ミドルリターンの商品を生み出すことができるのです。
インチキ極まりないw
ローリスク・ミドルリターンの金融商品といえば投資家からみれば「おいしい商品」ですが、中身は爆弾入りの危険な商品であることには変わりありません。
しかし、住宅バブルの真っ只中では、誰もがそのリスクを軽視していたため、機関投資家が大量に爆弾を抱える状況に陥ってしまうのでした。
その後、住宅バブルが弾け、住宅価格が下落に転じると、サブプライムローンの債権も嫌気されサブプライムローンの債権価格が暴落します。
破綻リスクが高く、担保物件(家)を売っても満額回収できない債権なんてゴミですから当然ですよねw
サブプライムローンの債権価格が暴落することで、それを含む金融商品は軒並み暴落し、機関投資家は巨額の損失を抱えることとなるのです。
今後の動きに関して
BNPLはおそらく流行ると思います。
なのでBNPLのプラットフォームを提供する企業であるマルケタ(MQ)なんかは今後大きく成長する可能性が高いと思います。
逆にBNPLによって一定の決済トランザクションを奪われる既存の決済インフラ企業なんかは株価が下がると思います。(実際、VISAは株価下げてますからね。)
但し、BNPLは仕組みの都合上、(何年後かわかりませんが)大きな問題の種になる可能性が考えられます。
BNPLの仕組みはサブプライムローン問題と比べた場合、類似点が多く見受けられるため、巨額のBNPL債券残高が積み上がった状態で、信用問題が起これば○○ショックのような暴落イベントのトリガになりかねません。
また、現在はBNPLユーザーが負担する金利はゼロとなっていますが、BNPL債券のリスクが現時点の見積りより実態の方が大きいと見られ始めれば、リスクに応じた分だけ金利を上昇させないといけません(でないと債券の買い手がつかなくなるから)。
そうなると、上昇した金利を店舗負担だけでカバーすることができなくなり、カバーしきれない分はユーザーが被る可能性も、もちろん出てくると思います。
信用力の低い人達でも利用可能であるという仕組みは「便利」と捉えるか、「リスキー」と捉えるかは難しいところではあります。(富松は「かなりリスキー」と捉えています。)
まとめ
BNPLは「(一括払いはできないけど)分割払いで今すぐ商品を購入したい!!(でも金利は払いたくない)」という人にはとても便利で、これまで購入をあきらめていた層を新たな消費者層として呼び込める点においては秀逸な仕組みだと思います。
呼び込もうとしている層が非常にリスキーな層であるという点に目をつぶればですがw
正直、富松はネットショッピング程度の買い物で分割払いを選択する感覚が良く分からないので、BNPLの実需がそこまで大きく膨らむとは思っていないのですが、世の中には様々なニーズがあるものなので一時的には流行りそうではあるかなと考えています。
同時に「クレカの審査も通らない人でも利用が可能」という点がどうも引っかかっていて、最終的に大問題に発展して法規制が入るような流れを予想しています。
普段、「クレカ一括払い」で決済している人にとってはそこまで大きな利用メリットがあるわけではないですからねw
おまけ
↓はリーマンショックに至るまでが(サブプライムローンの問題点も含めて)描かれた映画です。
面白いのですが、金融用語がガンガン出てくるので初見の人は最低限、以下の用語を抑えてから見た方がいいかもです。
【MBS】
モーゲージ債の事。住宅ローン債権を金融市場で売り買いできるように証券化したもの。
【CDO】
債務担保証券の事。MBS等の証券を細かくして他の証券と混ぜ合わせてできた金融商品のこと。
【CDS】
クレジット・デフォルト・スワップの略。
月々、保険金を支払うことでCDOが紙くずになった場合に保険金を貰う権利の事を指すのですが、要はCDOを空売りするための金融商品と考えてOKです。
実話に基づくお話なのでリーマンショックの裏側を知りたい人におススメの映画です☆
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