為替介入なんて「長期的には」無意味なのかもしれない

円安の流れは留まることを知らず、執筆時点で1ドル=154.92円の状態です。

もうすぐ1ドル=155円突破か?

富松
富松

円安だと輸出企業に有利という言説がありますが、それはあくまで「短期的な目線で言うと」に限られます。

長期的な目線で言うと自国通貨が安いことのメリットは何一つありません。

昨今では「為替介入」の声が各所で叫ばれていますが、そう簡単にできないのが日本の苦しい現状です。

ということで今回は「為替介入」に関してお話しようと思います。

為替介入の種類

「為替介入」とは文字通り政府が為替レートに調整を加えようとする行為ですが、その手法は大きくわけて3種類あります。

  • 口先介入
  • 単独介入
  • 協調介入

「口先介入」は文字通り言葉だけで圧力をかけるアレですw

「高い緊張感を持って注視し、過度な変動に対してはあらゆる選択肢を排除せず適切な対応を取りたい」と言ってみるやつですw

富松
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まぁ現在の日本は介入の可能性が薄い(もしくは介入しても大したことない)と周囲から見られているため、口先介入の効果はほとんどないのが悲しいところですね。

次に「単独介入」ですが、例えば日本が独自に為替介入を行うといったような「1国のみで為替介入を行う」という手法です。

単独介入は自国通貨を「通貨安にする介入」と、「通貨高にする介入」があります。

自国通貨を「通貨安にする介入」は(自国通貨を刷りまくって売りまくればいいだけなので)理論上無限にできますが、「通貨高にする介入」には限度があります。

「通貨高にする介入」を単独で行おうとした場合、相手国の通貨を売って、自国通貨を買わなければいけないので外貨準備高(日本が保有するドルの量)が介入可能な上限となります。

まぁ外貨準備は為替介入以外にも重要な役割があるので、為替介入なんかに全投入するわけにもいかないし、仮に全力でやったらアメリカに「為替操作国認定」を受けてペナルティを食らうので、結果的にそう大きな介入はできません。

富松
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最後に「協調介入」です。

例えば、日本独自に為替介入を行うのではなく米国や他国と協力して為替介入を行うといった手法です。

単独では限界がある為替介入も「みんなでやれば強力です!!」ってなもんで、現在の円安トレンド(っていうかドル高トレンド)を転換させるためにはこれしかないんじゃないかなと思います。

ただし、各国の同意が必要だったりするので、事前の根回しが必要となり、中々実現できるものでもありません。

まぁ米国は経済好調で、わざわざドル高解消させる意味もないので期待薄かなぁ・・・。

富松
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国際金融のトリレンマ ~為替介入は無意味?~

みなさんは「国際金融のトリレンマ」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

「トリレンマ」は三者択一を指す言葉です。(ちなみに二者択一は「ジレンマ」です。)

「国際金融のトリレンマ」とは国際金融理論の一説で、一国が対外的な通貨政策を取る時に以下の3つの要素の中から1つを諦めなければならないというものです。

  1. 為替相場の安定性(≒固定相場)
  2. 金融政策の独立性
  3. 自由な資本移動

日本は米国の金利とは関係なく、独自に低金利政策を実施しているので「2.金融政策の独立性」を得ています。

また、我々が(特段の制限を受けることなく)米国株に投資したり、送金できたりするので「3.自由な資本移動」も実現されています。(個人だけではなく法人も同様です。)

つまり、諦めなければいけないのは「1.為替相場の安定性(≒固定相場)」となってしまうのです。

為替介入によって、「日本人が心地よいレート」になったとしてもそれは一時的なものであり、恒常的に「1.為替相場の安定性」が欲しければ、「2.金融政策の独立性」または「3.自由な資本移動」を諦めなければなりません。

・・・が、そんなことできませんよねw

だから「為替介入」は「その場しのぎ」にしかならないので、無意味だと思っています。(=為替レートの行方は国ではなく、市場が決定する形になっているから。)

富松
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ちなみに、日本に限らず先進国の多くは「1.為替相場の安定性(≒固定相場)」を諦めています。

「1.為替相場の安定性(≒固定相場)」以外の要素を諦めた国を見ていくと・・・

「2.金融政策の独立性」を諦めたのがユーロ圏内の国と香港になります。

自由な資本移動を許しながら為替相場を固定するには、金利差を排除する必要があるので、ユーロ圏内の各国は独自の金融政策は採れませんし、香港は米国の金融政策に追随する形をとっています。

そして「3.自由な資本移動」を諦めたのが中国です。

為替相場の安定性(管理相場制)を保ちつつも、国内の金融政策の独立性は守りたい・・・という事で、資本移動を政府によってある程度制限しなければならない状態となっています。

(しかしながら、昨今では「人民元の国際化」と言われている中での「資本移動の制限は矛盾しているじゃないか」ということで、資本移動の制限を緩めつつあるため、元安に傾きつつあるようです。)

こう見ると、為替に対する考え方は国ごとに異なり面白いし、単に「介入して円高にすればいい」というほど事は単純ではないことがわかりますね。(結局、なるようにしかならないってことかww)

富松
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投資方針,雑記

Posted by tomimatsu